産後クライシスの乗り越え方

妊娠中、すでに「産後クライシス」に危機感を持つ

産後クライシス。

ちょっと前にこの言葉がブームになった頃、私は妊娠中でした。

NHKスペシャルを見てピンと来て、さらに書籍「産後クライシス」を読んで、ワナワナ震えました。

「私、絶対、コレなるやつ。。。!」

産前からすでに、「産後クライシス」に対する危機感を持った私。

というか、すでに妊娠中から産後クライシスは静かに始まっている気がしました。

  • お腹がしんどい。
  • 気持ちが不安定。
  • 休職したから無収入。
  • 全てやることなすこと、前を同じようにスムーズに運べない。

妊娠をする以前とはもう、いろいろなことが明らかに違っている自分。

とにかく不安で不安で仕方ない。

一方で、自分の体には何も起きない夫。

温度差はすでにちょっと違っていて、

「アレ?」

と夫に対して今までになかった感情が生まれることも。

コレで、このまま行って、子供が無事産まれ、慣れない育児をするようになったら。。。

  • (もともと)キレやすい私。
  • 気づかない夫(夫というより、男の人はみんなそうだと思っている)

破滅に向かうな。

うん。絶対。

そういうことで、産前から産後クライシス対策はスタートしました。

✴︎産後クライシスとは

出産後2-3年の間に、急激に夫婦仲が悪化する現象。産後の環境の変化、ホルモンバランス、ストレスなどの複合的な要因により、主に妻の方が夫への不満や恨みを募らせ、関係崩壊へつながることも多い。

ja.wikipedia.org

産前の産後クライシス対策とは

まあ、偉そうに言いましたが大したことはしていません。

  • 産後クライシス、普通に起こる前提で考える(ウチの夫婦に限って、、という発想は無しで)
  • 夫に、出産前に「産後クライシス」を課題図書に指定、完読してもらう

以上。

でも、なかなか読んでくれないんですよねー!

買って、机の前に置いといたのに!

イライラしましたぁ。

ま、でもわかります。

人に勧められた本って、無性に読みたくないですよね!

でも、コレは読んでもらわないと、まずいから。ホント。。

産後の危機について、具体的に知っておいてもらって、全然、人ごとじゃないってわかってもらいたいから。。!

そう思い、念じ、机の上に置かれた手付かずの状態が経過2週間後、いつまでたっても読む気配のない夫に

「人に勧められた本をあまり読みたくない気持ちはわかる。私もそうだから。でも!何の前知識もないまま、父親になる気?コレは、読んでおいてくれなきゃ、困る。一緒に子育てする人に、読んでおいてもらわないと、すごく困る。父親になる仕事の一つとして、読んでおいてほしい」

と真剣にお願いしました。

そしたら、読んでくれました。

感想は特になし。

「産後って地獄なんだな。ウゲー」と思ったかも。 

でも、読んでくれただけで満足。

産後って、お母さんは本当に頭の中が大混乱で(ホルモンのせいで)大変なんだっていうことだけでも、

そして、その大混乱の中で夫婦関係が破綻するパターンが非常に多いということ、

それだけを、この本読んで、知ってもらえたら、それで十分。

実際、多くは語らない夫でしたが、産前にこの産後クライシスの本を読んでもらったことは、振り返ってみるとかなり大きかった気がします。

いざ産後。対策してても、産後クライシスになるもんはなる!

いざ、無事に出産。

そのまま産後に突入!

いやー、やっぱりなりましたよ。産後クライシス。ガッツリと。

当然ですよ。

予習しようが対策しようが、なるもんはなる。

当たり前。

こちとら、産後でホルモンバランスはジェットコースター級

ガルガルしていたと思ったら、急に涙もろくなったり、またイライラしてメソメソしてガルガルして。。と、24時間(起きてるからね)、感情も忙しいの何の!

特にひどいのが、「思い出し怒り」

2日前に言われた親戚の言葉とかを、夜中の授乳中に思い出して、猛烈に腹を立て始め、

「今から(注・午前3時)電話して抗議してやるっ!」

とか息巻いて。やばかった。。

慣れない新生児育児をしながら、そんな感情の起伏に振り回されっぱなしの日々。

その横で、夫も新人パパとして、何とか、髪ふりみだして発狂寸前の妻と産まれてまもない何もできない我が子のサポートをしようと頑張っているけど。

新米だからね、なかなか上手にできないわけです。

平常運転なら、そういうのも込みで冷静に判断できるタイプ(と信じている)私ですが、とにかく、産後は普通じゃない。

やっぱりイライラしてしまうわけ。

で、上手に言えないわけ。

指示できないわけ。

「具体的にあれやってコレやって」

テキパキ言えれば良いんだけど、わかんないわけ。

何たって、ママもね、新米だ。どんな指示出せばいいかも全然わかんない(笑)。

そして、夫もいっぱいいっぱいで、それなりにイライラしてくるわけです。

でも必死で我慢してるわけ。

「産後の奥さんは、普通じゃない」

て一応分かってくれてるから。

でも疲れてくるわけ、人間だから。

私の切れる回数の10分の1ほどでしたが、生後3ヶ月までのあいだに、温厚な夫も、色々耐えきれず、切れることがありました。お茶碗、割れました。

24時間授乳して眠れないストレスフルマックスの私に、夫の気持ちのケアをする余裕は全くありませんでした。

むしろ、自分のケアしてくれない(足りない)夫にばかり、腹を立ててました。

意思疎通が全然うまくいかない。

もちろん、夫のことを男性として見ることなんて全くできない。

こんな嵐みたいな、地獄みたいな、生後の3ヶ月間。

赤ちゃんは可愛いと、かろうじて思えたけど(思えないときだってもちろんたくさんあった)、家の中はめちゃくちゃでした。

もー。

絶望しましたね。

夫婦関係、終わるかもって。

生後の3ヶ月は、あっという間な感じでもあると同時に、長くもありました。

今振り返ると、明らかに尋常じゃない生活ペースの渦中にいる二人が、お互いをケアできず、喧嘩をするのは当然だと思えるし、いっときの事だとわかるけど、渦中にいる時は、まったく先が見えなくて。

こんな感じで、夫婦関係冷え切っていくのかな。。と覚悟しました。

でも、すごく悔しかった。

もともと仲が悪いわけじゃなかったのに、日常に負けて、関係が崩れていくなんて、本当に本当に悔しかったです。

私たち、どちらも一生懸命で、どちらも悪いわけじゃないのに。

生後4ヶ月。休息を手に入れて産後クライシスと向き合う

嵐のような生後3ヶ月、それでも「決定的」な「亀裂」が起きなかったのは、やはり夫婦ともに

「産後クライシス」という事象を知っていたからかも。

「産後クライシス」を知らなければ、

「何だこの状況、もう終わりだ!ムカつく!何もかも!終わりだ!おしまい!許さない!」

とちゃぶ台ひっくり返していた可能性は多いにあります。(特に、短気な私の場合)

産後クライシスの渦に入り込みながらも、あのとき読んだ知識をうっすら思い出しながら

「これが産後クライシスだな」

「こういうことが世の中でたくさん起きている社会問題なんだ」

とどこか冷静でいられて、

「自分たちだけじゃない。世の中の多くの夫婦が直面する」

「男の人は、脳みそ的にどうしても気づけない部分がある」

「永遠に感じるけど、一時的なもの」

そう俯瞰することができ、

「いつかこの状況は必ず終わる」

「イライラするのは産後のホルモンのせい。思春期みたいなもんだ。私、思春期もひどかったからなーしょうがないかな」

「夫を男の人として見られない状況は、産後のホルモンのせいで自分のせいじゃない」

と、頭の中で思考のガス抜きすることができ、かろうじて夫婦の糸をつなぐことができた気がします。

産後クライシスは、すぐに全解決しようとしない

生後4ヶ月、私は、一時保育やベビーシッターを使って、2時間ほど一人になる時間を作るようにしました。

子育てのストレスは、一人の時間でしか癒せない。

そう、個人的には思っています。

というか、正気に戻るにはひとり時間が必須です。

一時保育やベビーシッターは登録やらお金やらハードルは色々ありますが、

「お金なんて今使わずにいつ使う」

「明らかなる緊急事態である」

「自分の身は自分で守るしかない」

そう思い、一人になる時間をとにかく、頑張って作りました。

そうすることで、ようやく、夫や家族へ気持ちを向ける余裕が出てきました。

夫へのイライラや、どうしても細かくアラを探してしまうこと、男性として見られないこと、全てが夫婦関係への絶望の序章にも見えましたが、この「激しい感情」は、お勉強した通り、「一時のこと」だと、まずは割り切ろう。そして、

「踏ん張ろう」

と思いました。

すぐに全解決はできない。

それなら、今、私ができることは何か。

 それは、

今かろうじて繋がっている、夫婦の細い細い糸をどうにかつなぐこと。

  • 夫に理解して欲しいことは、夫にわかるように説明する努力くらいはする
  • 日常の感情の波に敗北しない。そのためにちゃんと自分も休息をとる(一人の時間を何としてでもとる)。

そう「今後の指針」を決めました。

夫に対する「1センチの努力」

子育て優先はしょうがない。

でも、夫婦の糸を断ち切らないための、「1センチの努力」が大事だと思いました。

「仕事お疲れ様」

「育児も家事も仕事もしてくれて感謝している」

「いつもイラついて申し訳ない」

「体調は大丈夫?」

思いが追いつかなくとも良い、言葉だけでも。せめて。

疲れてるからと言って、一日、夫婦が顔を見ず、話さないのはやっぱりまずい。

言葉をかけるのなんてたった2秒、それくらいはちゃんと顔を見て丁寧に声をかけようと思いました。

そして、夫の顔色と表情も。

1秒あれば、チェックできます。

「1秒のまなざし」大事。

この1センチの努力と、1秒のまなざしで、どうにか細い糸を切らさずに済んだ気がします。

夫に理解してもらうことの大切さ

産後クライシス解決の糸口として、私は一人の時間を得ることで、荒ぶった気持ちをクールダウンさせることができました。

クールダウンした頭で考えたのが、やはり夫婦間のストレスの多くは

「夫に理解してもらえない」

という絶望感から来ている、ということ。

もともと気付きにくいタイプの性格の人もいるけれど、

やっぱり、男の人は

「女性の言葉にできないモヤモヤやイライラ、焦燥感」

には、気付きにくい。

もうそれは脳みその構造の問題だから、仕方ないんです。

「言わなくてもわかって」は通用しないし、ある種の甘えでもあります。

それをこちらが望んでしまったら、何も進まないし、解決しない。

冷静に語っちゃってますが、私も「夫に理解してもらいたい」けど、何も上手に伝えきれず、何度もブチ切れました。

というか、乳飲み子抱えて毎日必死でひとり子育てして、さらに、「夫にも理解されない」と感じてしまうと、もう、どうしようもなく孤独で、ひどく追い詰められた気持ちになるんですよね。

私のブチ切れ伝説は

  • テレビ台をひっくり返して泣き叫んだ
  • 夕食の鍋の中身(調理中だったが、帰りの遅い夫に何もかも嫌になって)を床にぶちまけたまま、子供を連れて逃走(夜のファミレス)
  • 「もう、神経が持たない」「もう無理」と仕事中の夫に、何度も脅迫めいたラインを送り続ける

(もちろん、本当に辛いとき限定です。毎週こんなことやってたら、愛想つかされるので)

決してこんなこと、オススメしないけど、(旦那さんの性格的にはむしろ逆効果の場合も)

「こんなことやっちゃうほど、ひとり子育に追い詰められてる」

ということを気づいてもらうために、もう仕方なかった。当時は。

そんな数々の失敗を教訓に、徐々に夫に理解してもうために工夫する様になりました。

基本的には、お願いするときは、「わかりやすく簡潔」が大事。

「夕食の後に、お皿を洗って欲しい」

と夫にお願いしたい場合。

NG例:

「あのね。私は一日中育児やっていて、朝から腰が痛いのに買い物にも行って、ご飯作って、その間にまたギャン泣きが始まって…」

と、「お皿を洗って欲しい」ことを伝えたいだけなのに、前フリがたっぷりあり、結局何が伝えたいかわかってもらえず、

「この人は非協力的だ」

とプリプリしてしまうこと、ありませんか?

気持ちはわかるのですが、自分の1日の大変さはとりあえず横に置いといて、

「ごめん、今日疲れちゃったから、お皿洗ってもらっていい?」

で良いのです。

洗ってもらったら、

「ありがとう。これからも、できれば洗ってもらえると助かるなあ」

で良いんです。

男性は察するのが苦手です。

疲れてるなら、「疲れてる」と簡潔に言って、簡潔にお願いすればいいんです。

「お皿を洗って欲しい、私の背景」を存分に知って欲しい気持ちもありますが、二つ(お皿を洗って欲しいという要求と、洗えない自分の厳しい状況)を同時に押し付けるのは、やっぱり男の人には難易度高いんです。

人間対人間、最低限の思いやりとして、相手に伝わりやすい伝え方を工夫するのが大事だなあと痛感しました。(ちなみに、いまだに失敗します)

産後クライシスは生後1年半〜2年で、落ち着く

赤ちゃんの夜泣きが落ち着く時期と大体一緒ですね。

気づいたら、あの狂おしいほど(笑)の、激しいイライラ、夫への苛立ち、夫へのアラ探しは、静かに落ち着きました。

そんな一人目の産後を経て、二人目も出産。

(ちなみに二人目は産後クライシス自体ありませんでした。二人とも、新米パパママではない、というのが大きかったと思います)

何とか持ちこたえることができたと思っています。(私的には)

なんとか、決定的なダメージを残す傷つけ合いをせずに済んだからだと思います。(私的には)

細かい不満はその都度たくさんあったけど、絶対にまずいミステイク(浮気、暴力、ネグレクト)はなかったせいか、驚くべきことに、何に怒っていたか、ほとんど綺麗に忘れました。(しつこいですが、夫はどうだか分からないよ)

もちろん、まだホルモンが完全に戻った感じはなく、夫を男性として見られるか、、とかは、まだまだ試行錯誤中ではあります。

色々な意味で、夫婦関係って、最低限の気遣いや配慮は絶やしちゃいけない、それは、産後だけでなく、多分一生そうなんだろうな、と思います。

でも、産後のあの産後クライシス時期ほど、何も分からない新米パパママである二人が、ただただ無力に嵐の中に巻き込まれていく、「非常事態」、「過酷」なものはないと思ってます。

夫婦関係の初期、ましてや子育て初期に、コレがあるのは正直酷とすら思う。

私は里帰り無し、ワンオペ、両親のヘルプなしで出産、子育てをしたから余計そう思ったのかもしれません。

産後クライシスは、まったく他人事ではなく、心の準備をしていても、実際、渦中に入りました。

夫婦によって、乗り越える形やパターンはそれぞれあると思いますが、やはり大事なのは

「産後クライシスを知っておくこと」

「最低限の思いやり」

「休息」

「伝える努力」

ここら辺が、夫婦ともに乗り越えるためのキーポイントになるのではと思っています。

産後クライシス (ポプラ新書)